「不可能を可能にした家」
(8.5坪、再建築不可の敷地に新築)
M邸 東京都杉並区
建替え(新築)2世帯:玄関水廻り共有型
 
 

ある日、築40年近くになった我が家を、2世帯住宅へリフォームしようかと思われたM様。すべてはそこから始まりました。
建物には寿命というのがあります。リフォームしても再生困難な場合、建替えを検討するのも選択肢です。当初、私達は建物診断の結果「リフォームは困難との判断」をしました。せっかくご相談頂きましたが、出番が無いと思いご遠慮いたしました。大手のリフォーム会社さんは「リフォーム出来ます」と言ってたそうですが。不思議でした。

その後、私達が忘れた頃、M様からお電話を頂きました。「建替えたいが受けてもらえるか?」・・・判断を信用して頂き、とても嬉しかったですね。
建替えられない土地という、衝撃の事実が明らかになることも知らず・・・

しかし・・・
完工
(After)

建て替え(新築)です。
いかにして可能にしたか・・・長い長い物語は以下に
  
↓↓

今回は「43条ただし書き」という役所の制限が厳しく付く新築でした。これはいろいろ審査を経て、区長などの許可が必要なものです。
東京都内は火事と地震に敏感ですので、外部には使う材料は耐火性能が明確に数値化されているものを使用しました。構造は木造3階建てによくある「準耐火構造」というものです。

玄関も特注では無く、建材メーカーのものを使用しています。近年はとてもおしゃれな商品が増えたと思います。



玄関ドアは傾き、天井には雨漏れ、外壁にひび割れの痕が・・

<室内は、床の傾斜が法定基準を超えていました。建物も、過去に無理なリフォームを繰り返し、危険なオーバーハングがありました。
(各赤ライン)

Before

リフォームが可能かどうか?・・・判断する必要があるため、今回は最初に「建物の現況検査」というのやりました。

私達は、リフォームを成功させるために「住まいの現状を的確に判断する」ことが、最も重要だと考えています。

結果、残念ながらこの建物は、リフォームに耐えうる・・・という判断に至りませんでした。

     


そして建替えが決まり、今度は敷地条件を調査しました。すると・・・!

驚くべきことにこの建物は「法律上の道路」(※-1)に一切接していなかったのです。
建築基準法では4m以上の「道路」(※-2)に2m以上接していなければ、住宅は建てられない事になっているのです。

(右図:黄色部分は、道路で無く「通路」でした)

※-1:建築基準法第42条第1項・・・消防車などが通れるように「4mは必要」と、戦後になって制定されました。

※-2:法律制定以前からある道で、4m未満の道路扱い(42条2項道路)も見られますが、そこは「いずれ4m以上となるよう」に建替えなどするたび、敷地を下げて広げるよう指導されるのが一般的です。「セットバック」といわれています。


M様の家は、35年程前に中古戸建であった建売を購入されたものでした。その時から、前の道はずっと「道路」だと思われていたようです。
しかも・・・「計画道路」にかかっていました。この場合3階建てや鉄筋コンクリート造が駄目など、制約が多くなります。条件的には二重、三重苦ともいえるものでした。


残された方法としては役所の協力と「建築審査会の同意」を得、43条ただし書の許可を受けるしか無い・・・と判断しました。 ただ、 この方法でも許可される保証は無いのです。行き止まりの敷地などは、災害時の避難計画等、書類の作成・近隣説明など大変に労力を要する作業となります。
皆で悩みました。しかし、このまま中途半端な状態で、もしも大地震で建物が倒壊したら・・・そう思うと、いてもたってもいられなくなりました。

時間が掛かりました。厳しい条件も付きました。

しかし諦めませんでした。お客様と私達がお互いに力を合わせ、何とか合法的に建替える・・・

当初「無理」と言われた役所の方々も、最終段階の「建築審査会」まで引っ張ってくれました。完工後は完了検査も通り「検査済証」をもらいました。

確認申請通りました。取れました。(墨で何だか分かりませんね・・・スミマセン)


さあ、少し工事を見てみましょう。リフォーム設計の専門家が新築をすると・・・

地盤調査です。
(スウェーデン式サウンディング試験)
地盤調査は義務でないのですが、私達は「必須」と考えています。

配筋です。
地盤調査の結果を踏まえ、基礎の形状(強さなど)を決定します。

今回はベタ基礎・ダブル配筋としました。
配筋チェックです。
最後に見えなくなる箇所は、とても重要です。

基礎のコンクリートを打ちます。
ミキサー車が何回も来ます。コンクリートの打設は、一定時間以上の間隔を空けてはなりません。
コンクリートの打設中です。強度は事前に決められたものを設定します。途中、薄めたりしてはなりません。 間隔を空け過ぎて固まったり、中の骨材が偏ったりしないようにする必要があります。
基礎が出来上がりました。
一定期間「養生」という時間をもうけます。この間、雨が降ったりして水が溜まっていました。

コンクリートは水で固まる性質です。よく誤解されますが、施工後の多少の水は問題ありません。後で吸い出せばいいのです。

建て方(上棟)です。

新築はこれがあるからいいですね!
なぜか興奮します。

上棟式の時に撮りました。
M様、たのもしい!良かったですね(ホントに・・・)

最近の上棟式後の振る舞いは、お酒を出しません。職人さん達は車通勤が主ですから・・・


土台と通し柱です。
国産檜の4寸角(120o角)を使用しました。 床下換気は「基礎パッキン」で全周換気としました。

(柱や、ボルトの下にはパッキンが必要です
 

骨組みです。
棟木・梁など2階の上部です。
この時は、お隣が影にならないようにするための「北側斜線」をチェックしました。
屋根の施工中です。
一般的に水は上から下に流れます。そこで、屋根材は下から上へ貼っていきます。
金物チェックです。
各部分、必要なところにしっかり固定されているか、見て触って確認します。
トップライト(天窓)です。
建物中央に設けた階段の上から、光が1、2階に廻るよう、設計しました。
床材の厚さチェックです。
国産杉・無垢板で、厚さ30o以上のものを使用しました。

建物外周です。
基礎や梁は周りを囲んでいますが、建築の条件である「建ペイ率」から、玄関先に空間を設けました。

寸法チェックです。
今回は準耐火構造のため、階段下も「強化せっこうボード」で12o以上である事を確認しました。
階段周りです。
火災時には炎は下から上に昇ります。階段は煙突のようになります。そこで階段の取り付け前に、厚さ15oのせっこうボードを貼ります。

使用した構造用の合板です。
シックハウスという言葉が有名になりましたが、下地材にあたる合板も☆4つ(☆の数が4つで多い方が安全)のものを使用します。

サッシのチェックです。
サッシの施工には「窓廻り防水テープ」を使用します。これは貼る順序まで決まっています。結構重要です。
外壁下地部分です。
今回は「外壁通気工法」を使用しました。壁内の空気層が、断熱性能を向上させます。写真は透湿防水シートです。湿気は透すが水は透さないものです。

内壁下地部分です。
火災時に炎が壁内に入らないように、壁と天井の絡む壁内に、当て木
(ファイヤーストップとも呼ばれて伊います)を使用しています。
断熱材は、指導によりロックウールです。厚さも決められています。

外壁シーリング工事です。
完成に近づいています。シーリングという弾力性のある目地のようなものを、サッシ廻りやジョイントなどに施工しています。
内壁下地処理です。
せっこうボード継ぎ目など、段差をパテというもので調整します。このパテ材も、シックハウス対策のものを使用しています。
室内天井です。
仕上げ材は、珪藻土を使用しました


床仕上げ材です。
私達は、常に足が接する床材は大変重要だと考えています。国産杉・無垢のものを使用しました。これは、寝転んでも気持ちいいものです。


キッチン・レンジフードです。

 

完成です。


建物向って2階・右手の出窓から、かろうじて新宿新都心の夜景が見えます。(この写真じゃ分からないですけど・・・笑)

私達は、住まう人の目線を大切にすること、構造の安定など、基本は新築もリフォームも同じだと考えています。
ただ、数多く リフォームに携わり「経年変化」した建物を見てきた為か、建物が完成した時点から後どうなっていくのか?を考える癖がついたようです。
新築時から年月を経て劣化していくだけ・・・それでは寂しい気がします。
建物と住まう人が一緒に成長していける・・・「経年美化」とでもいいましょうか。

             そんなことを考えながら仕事をしています。
設計・監理「未来空間」
工事施工「大栄工業」

お客様の声:

「未来空間さんに当初、『リフォームは困難です。お金を掛けるのはもったいない』と、はっきり言ってもらって良かった。素人では基準・判断が難しかったですから。」「難しい条件を諦めないで、建替え(新築)が可能になって良かった。よくここまで付き合ってくれたと思う。」

   
 
 

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